吉岡里帆(エーチーム所属)
亡くなった社長が
「背中を押してくれた」
新ドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』(7月17日スタート)
今年1月、『きみが心に棲みついた』(TBS系)で初の連続ドラマ主演を果たした吉岡里帆(エーチーム所属)。2016年の朝ドラに始まり、着々と評価と人気を得て、いまや若手女優の中でも屈指の売れっ子となっている。5月に、父とも慕った所属事務所の社長を亡くしたが、その言葉に背中を押されて出演を決めたのが、新ドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』(7月17日スタート カンテレ・フジテレビ系)だ。人気者であるがゆえ、葛藤することも多い。「なかなか自信はつかない」と語る吉岡の、作品、そして人との向き合い方とは?
■吉岡里帆 ドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』インタビュー
■主役やヒロイン役が増えても「なかなか自信ってつかないもの」
――現在25歳、芸能界デビューから5年が経ちましたが、主役やヒロインの立場として現場に立つことも増えてきましたね。
吉岡里帆:ありがとうございます。毎回プレッシャーとの戦いですが、現場の皆さんに支えられながら頑張っています。
――7月スタートの新ドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』はカンテレ・フジテレビ系の火曜9時枠で、吉岡さんは『メディカルチーム レディ・ダ・ヴィンチの診断』以来2年ぶりの出演になります。当時と今で、ご自身周りで変わったことはありますか?
吉岡里帆:仲間が増えた、というのはすごく感じます。「一緒に頑張っていこう」と声を掛けてくださる方が多くなったり、「また次も」と言われて実際に再会することもありました。撮影現場では、主役としてやらなきゃいけないことがすごく増えた気がします。『レディ・ダ・ヴィンチ』のときは先輩のお姉さま方に守られて、「ついて行けばいい」と思っていて。主役だった吉田羊さんは自分のことに集中したかったかもしれないのに、私にもたくさん声を掛けてくださったのを思い出します。自分もそんなふうにありたいです。
――主役だと、演技への取り組みは変わりますか?
吉岡里帆:脇のときは主役の方が光るように、対極になることを意識していました。自分が主演させてもらうと、周りの人に支えられて初めて立てることを実感します。今回だと、顔合わせのときに、同年代の山田(裕貴)さんや川栄(李奈)さんが「支えるよ」と言ってくれて。ありがたいですね。
――『きみが心に棲みついた』(TBS系)で主役をまっとうして、自信はついたのでは?
吉岡里帆:なかなか自信ってつかないものです…。どんな役でもクランクインの前日は眠れませんし、頑張って頑張って、ギリギリでやっています。とても難しいことに挑戦するという意識は、何度現場に立っても変わらないですね。
■「やりたいと思うなら頑張ってみなさい」、亡くなった社長が語った言葉
――ご自身が世の中に知られてきたことは実感しますか?
吉岡里帆:それはあります。街で役名でなく名前で声を掛けていただくようになりました。私がこの仕事をしているのを知らなかった親戚からも、「サインをちょうだい」と言われることもあって。純粋に嬉しいです(笑)。
――『健康で文化的な最低限度の生活』は生活保護をテーマとした社会派の作品。やりたい気持ちは強かったんですか?
吉岡里帆:今回は自分でプロットや原作マンガを読んで、「これをやりたい!」と強く思いました。(5月に他界した所属事務所の)社長は「難しい内容だけど、自分がやりたいと思うなら頑張ってみなさい」と背中を押してくれました。
――即決したんですか?
吉岡里帆:段階を踏んで考えました。プロデューサーさんの「絶対面白いものになる!」という熱意がすごかったのが決め手のひとつ。あとは、原作の漫画を読んでいると心が1ページごとに動くのを感じて「ぜひやりたい!」と思いました。
――脚本はどんな印象でした?
吉岡里帆:目を逸らしてはいけない現状を美談にせず生々しく描いているのですが、観てもらったあとに「明日も頑張ろう」と爽やかな気持ちになれる物語だなと思いました。
――吉岡さん演じる新人ケースワーカー・義経えみるについては?
吉岡里帆:良くも悪くも普通、これに尽きると思います。就職したばかりで何もわからず、不器用だけどお人よし。等身大の22歳という感じがしました。原作漫画だと、彼女は対話ができていない印象があって、台本でも「自分は人とちゃんと交流できない」と言い続けているんです。でも実際は、そう話す行動こそが交流になっていて、他人事に思えない感情がどんどん沸いてきました。
――以前にお話をうかがったとき、吉岡さんはすごくロジカルに役を組み立てている印象がありました。
吉岡里帆:それは作品によって違いますね。たとえば『カルテット』(TBS系・2017年)では、そういうふうに作らないとまっとうできない役でした。4人が和音を作っているところを、私が不協和音となって壊さないといけなかったので、脈絡や伏線をすごく考えました。でも、今回のえみるは普通であることが大事。どの役でも向き合うのに必死で、毎回「難しいな」と思います。
■「人生に大切なことを教えてくれる」、吉岡の家族の助言
――もともと生活保護に関して予備知識はありました?
吉岡里帆:ほとんどありませんでした。ただ、まだデビュー前に、家族で「大人になるってどういうことだろう?」という話になったこともあって、父親が「ちゃんと税金を払っていくこと」とか、「保険証を自分で作るようになったときかもね」と言っていて。実際に自分で税金などを払うようになって、いろいろ知っていきました。
――ご家族でそういう話をしているんですか?
吉岡里帆:大学受験や事務所に所属したとき、大役が決まったときなど、節目節目に父親がよく人生に大切なことを教えてくれます。私は、仕事で嬉しかったことも悩んでいることも全部話していて、「自分がこの年齢のときはこうだった」とか助言をもらいます。この作品をやると電話で報告したときも、「とても意味のある仕事だ」と喜んでくれて、漫画を全部買って読んだみたいです。本読みの日も偶然メールが来て、「当たり前のことを誰よりも丁寧に頑張ってください」というメッセージに身が引き締まりました。
■苦しいときの支えはファン、「待っている人が1人でもいてくれるなら」
――ケースワーカーは生活保護受給者を支える仕事ですが、吉岡さんにとって苦しいときの支えはありますか?
吉岡里帆:まず、ファンの方ですね。待っている人が1人でもいてくれるなら、作品を作っていきたいと思います。そばにいるスタッフさんも一緒に夢を追い掛けてくださって支えになっていますし、あとは良い作品を観ると「私もこんなことができるように頑張ろう」という気持ちになります。
――最近そういう作品はありましたか?
吉岡里帆:はい。『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』というデザイナーさんのドキュメンタリー映画で、その方がものすごく苦しみながら新しい作品作りをする姿に勇気をもらいました。作品中で、ドリスさんが「辛いことがあったら何をするか?」と問われて、「我慢します。受け止めて、それでもやるしかないですから」と答えているんです。一つ一つの質問に正直に飾らずに答えていて、衝撃を受けました。私も本当の言葉で、真摯に人と向き合うことを大事にしたいと思えました。
■『健康で文化的な最低限度の生活』
吉岡里帆主演・新火9ドラマ
『健康で文化的な最低限度の生活』
『健康で文化的な最低限度の生活』
⇒健康で文化的な最低限度の生活(ケンカツ) | 関西テレビ放送 カンテレ
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